縁があって、極真の全国大会を、最前列で観戦する機会を得た。久々に熱いエネルギーが自分にも湧き上がってくるのを感じた。「鋼の魂」という言葉をご存知だろうか?鍛えに鍛えた人間の、決してあきらめない精神のベクトル。気持ちと体。観察眼。反射神経。すべてを要求される究極の世界。人間のすばらしさを再確認できる世界である。
顔面を殴ることは禁じ手になっているので、選手が主に繰り出すのは正拳突き。正確で気合のこもった突きは、間近で見ていると気が乗り移っているのがはっきり分かる。音も違う。しかし、そのような正確な拳を突き出すためには、下半身の安定、腰を入れて全身の力で突き出すことが必要になる。ここで膝蹴りや前蹴りとのコンビネーションの問題が出てくる。相手の蹴りで下半身を崩されると、気合のこもった有効な正拳突きが出ない。ただ、力のこもらない拳になる。かといって、蹴り技に頼りすぎるとパンチが出ない。人並み外れた速度の蹴りを出し、相手を崩し、次の瞬間には、踏ん張って腰を入れて拳を突く。この一連のコンビネーションを自分のペースでできた選手が勝つ。結局いかに相手のパンチや蹴りにダメージを受けないで本来の体勢を維持し、自分のパンチを出すかである。
受けの美学。これが「鋼の魂」である。相手の拳を受けるために体を鍛える。観察眼を磨き、脳の反射と気の籠もった拳が連動する。世の中がいかにバーチャルになり、その身体感覚を失っても極真にみる、この武道の本筋ともいえる精神と肉体の合一が、本来の意味で普及することを願いたい。
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